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がんの遺伝・家族歴の整理

家系図から読み解く遺伝的リスク

ご家族に乳がん・前立腺がん・大腸がん・胃がん・膵がんなど、同じ種類のがんを経験された方が複数いる場合、体質として「がんになりやすさ」が受け継がれていることがあります。

すべてのがんが遺伝するわけではありませんが、一部には 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC) や リンチ症候群 など、早期発見や予防につながる重要な体質が知られています。

当院では、家系図やご家族の病歴を整理しながら、乳がん・前立腺がん・消化器がんなどについて、遺伝的背景が考えられるかを丁寧に確認します。必要に応じて、遺伝学的検査や今後の検診方針についてもご案内します。

「家族にがんが多くて気になる」「自分や子どもへの影響が心配」という方は、一度ご相談ください。早めに知ることで、将来の安心につながる場合があります。

当院では、下記のようながんと関連する遺伝子を検査することができます。

  • ・乳がん / 卵巣がん
  • ・前立腺がん
  • ・大腸がん / 子宮体がん
  • ・胃がん
  • ・膵がん
  • ・その他、脳腫瘍、腎がん、胆管がん、食道がん、肉腫、皮膚腫瘍 などのがん
1. 乳がん・卵巣がん
乳がんや卵巣がんは、家族性のがん相談で特に多い疾患です。母・姉妹・娘など近い血縁者に乳がんや卵巣がんがいる場合、また若い年齢で乳がんを発症した方、両側乳がんの方、男性乳がんの方が家系内にいる場合には、遺伝的な体質が関係していることがあります。
代表的なものに遺伝性乳がん卵巣がん症候群、HBOCがあり、主にBRCA1、BRCA2という遺伝子が関係します。これらは乳がん・卵巣がんだけでなく、前立腺がんや膵がんのリスクにも関係することが知られています。その他、PALB2、CHEK2、ATM、TP53、PTEN、CDH1などの遺伝子が関係することもあります。
2. 前立腺がん
前立腺がんは男性に多いがんですが、父・兄弟・祖父などに前立腺がんが複数みられる場合や、比較的若い年齢で診断された方がいる場合には、家族性の要素を考えることがあります。
特に重要なのはBRCA2で、BRCA1も関係することがあります。乳がん・卵巣がん・膵がんが多い家系で、男性に前立腺がんがみられる場合は、同じ遺伝的背景が関係している可能性があります。その他、ATM、CHEK2、HOXB13、PALB2なども前立腺がんリスクとの関連が知られています。家族歴によっては、PSA検査をいつから始めるか、どの程度注意深く経過を見るかを検討する材料になります。
3. 大腸がん・子宮体がん
大腸がんでは、親・兄弟姉妹・子どもなど近い血縁者に大腸がんがいる場合、発症リスクが高くなることがあります。特に、若年での大腸がん、大腸ポリープが多数ある家系、子宮体がん・卵巣がん・胃がん・尿路系のがんなどが一緒にみられる場合には、遺伝性腫瘍を考えます。
代表的なのがリンチ症候群で、主にMLH1、MSH2、MSH6、PMS2、場合によりEPCAMが関係します。リンチ症候群では、大腸がんだけでなく、子宮体がん、卵巣がん、胃がん、腎盂・尿管がん、小腸がんなどのリスクも高くなることがあります。また、大腸ポリープが非常に多い場合は家族性大腸腺腫症、FAPを考え、APC遺伝子が代表的です。MUTYH関連ポリポーシスでは、MUTYH遺伝子が関係します。
4. 胃がん
胃がんは日本では比較的頻度の高いがんであり、家族内に胃がんがあっても、すべてが遺伝性とは限りません。ピロリ菌感染、食生活、喫煙などの影響も大きいためです。ただし、若い年齢での胃がん、家系内に複数の胃がんがある場合、特に「びまん型胃がん」と呼ばれるタイプが複数みられる場合には、遺伝的な背景を確認することがあります。
代表的には遺伝性びまん性胃がんがあり、CDH1遺伝子がよく知られています。場合によりCTNNA1も関係します。また、胃がんはリンチ症候群でもみられることがあり、その場合はMLH1、MSH2、MSH6、PMS2などの遺伝子が関係します。胃がんの家族歴では、「何歳で発症したか」「胃がんの組織型」「大腸がんや子宮体がんなど他のがんが家系内にあるか」が重要です。
5. 膵がん
膵がんは早期発見が難しいがんのひとつです。家族内に膵がんの方が複数いる場合や、膵がんに加えて乳がん・卵巣がん・前立腺がん・悪性黒色腫などがみられる場合には、遺伝的な体質が関係していることがあります。
関係する遺伝子としては、BRCA1、BRCA2、PALB2、ATMが代表的です。また、リンチ症候群に関連するMLH1、MSH2、MSH6、PMS2、悪性黒色腫と関連するCDKN2A、ポリポーシスと関連するAPC、Peutz-Jeghers症候群に関係するSTK11なども、膵がんリスクに関わることがあります。膵がんの家族歴がある場合は、単に「膵がんがあるか」だけでなく、家系全体にどのようながんがあるかを整理することが大切です。

当院では、がんの種類、発症年齢、ご家族との続柄を丁寧に確認し、必要に応じて遺伝学的検査や専門医療機関での相談、今後の検診方針についてご案内します。遺伝子の情報は「不安を増やすため」ではなく、ご自身とご家族の健康管理に役立てるための情報です。

がんと関連する35の遺伝子
乳がんATM/BARD1/BRCA1/BRCA2/BRIP1/CDH1/CHEK2/MLH1/NBN/NF1/PALB2/PTEN/RAD51C/RAD51D/STK11/TP53
大腸がんAPC/AXIN2/BMPR1A/CHEK2/EPCAM/GALNT12/GREM1/MLH1/MSH2/MSH3/MSH6/MUTYH/NTHL1/PMS2/POLD1/POLE/PTEN/SMAD4/STK11/TP53
膵がんAPC/ATM/BRCA1/BRCA2/CDKN2A/EPCAM/MLH1/PALB2S/TK11/TP53
胃がんAPC/BMPR1A/CDH1/EPCAM/MLH1/MSH2/MSH6/SDHB/SDHD/SMAD4/STK11/TP53
卵巣がんATM/BRCA1/BRCA2/BRIP1/EPCAM/MLH1/MSH2/MSH6/NBN/PALB2/RAD51C/RAD51D/STK11
前立腺がんATM/BRCA1/BRCA2/BRIP1/CHEK2/MLH1/MSH2/MSH3/MSH6/MUTYH/NBN/PALB2/RAD51C/RAD51D/TP53
その他がんEPCAM/MLH1/MSH2/MSH6/PMS2/PTEN/SDHB/SDHD/SMAD4/STK11/TP53/VHL
※脳腫瘍、腎がん、膀胱がん、胆管がん、食道がん、肉腫、皮膚腫瘍など

さまざまながんのおおよそ10〜20%程度は、生まれながらそのがんにかかりやすくなる遺伝子の異常が原因でおこっています。

1個の遺伝子が、いくつもの種類のがんに関係することが知られています。自分の遺伝子を調べることでいずれかの遺伝子に異常が見つかった場合には、どのようながんに罹りやすいか予測ができます。

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診療時間:毎週土曜日 AM 9:00 ~ 12:00